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<白夜の『役目』>

白夜のアイデンティティーは、奈落と同一ではない。

肉体的には奈落を写した「鏡像」ではあっても、考え方やものの見方はまったく異なる。奈落のような私怨や世俗の欲は、白夜には見当たらない。むしろ、彼自身はこれといった野望や願望をもたないようにみえる。彼は犬夜叉たちや様々な事件に積極的には関わろうとせず、あくまで傍観者の立場を貫く。

まるで「この物語の一切は自分には関係ない」とでも言いたげに。しかし、白夜にはちゃんと役割があった。

あるときから彼は、はっきりと言葉にはしないが「自らの役目」を自覚したようだ。アニメ版で新たに挿入された台詞は「自らの役目」を自覚していないと出てこない台詞ではないだろうか。

 

犬夜叉 完結編24話 14:54-15:10

白夜「とうとう使いやがったか。殺生丸の爆砕牙は斬ったあとも破壊の効果が続き、その残骸を吸収した体をも壊していく…どうやらおれも『自分の役目』を果たす時がきたようだな…

 

「かごめを冥道残月破で斬る」という「役目」

今まで奈落の命令を「仕事」と称してきた彼が、これに関してのみ「役目」という別の単語を用いているのには、何か特別な意味があるに違いない。

「白夜の役目」の正体をつかむには、最終決戦で彼がかごめを斬ってから、彼女が四魂の玉と対決するまでの一連の流れをもう一度整理してみる必要がある。

【最終決戦~四魂の玉との闘いまでの流れ】

白夜はかごめの背後に音もなく忍び寄り、それに応えるように四魂の玉が脈打った直後、冥道残月破の妖力を奪った刀でかごめを斬る(アニメ版ではこの順序が逆転している)。その直後、犬夜叉の冥道残月破を受けてあっさり倒された。最期の台詞は以下のとおりだ。

 

55-10 181

白夜「ふっ…奈落が死ねば同時に滅びる分身の身だ。未練はないね…役目は…果たしたぜ…」

 

ところが冥道は開かれず、一見すると「ただの空振り」にしか見えなかったため、何をされたのか理解できない彼らは、しばし呆然とする。そして再び仲間と合流した犬夜叉たちは、かごめが四魂の玉を射抜いて浄化し、ついに奈落を斃す。

末期の力を振り絞り、骨喰いの井戸に辿り着いた奈落は最期、

「四魂の玉に願をかけた」

という不気味な遺言を残して、四魂の玉と共に消滅する。彼曰く、それは「四魂の玉自身の望み」でもあるらしい。

彼の死と同時に呪いが解け、弥勒の風穴も消えた。皆が安堵したのもつかの間、かごめの背後で冥道が開き、彼女は飲み込まれてしまう。それと同時に、戦国時代と現代の両方で骨喰いの井戸が消失してしまった。

四魂の玉がまだ存在することに気付いた犬夜叉は、自ら冥道に飛び込み、かごめのあとを追うが、玉の中に引き込まれてしまう。そこで彼が目撃したものは、未だ数多の妖怪と闘い続ける翠子と、首だけとなって死亡した奈落の姿だった(鬼蜘蛛たる彼が、この場所で蜘蛛の巣に囚われているのは、非常に皮肉な光景だ)。

 

一方かごめは、異空間にて四魂の玉から現代の高校生活の幻を見せられ、闇への怖れから

「助かりたい、帰りたい」

玉に望むよう唆される。もし、かごめが私欲に負ければ、堕ちた巫女として四魂の玉に取り込まれ、覚醒した奈落との闘いが、玉の中で延々と続く。

【白夜の『役目』は誰のため?】

「白夜が冥道残月破でかごめを斬る」ことによって、起こったこと(或いは分かったこと)を整理すると、以下六点となる。

 

①奈落は白夜がかごめを斬ったとき、四魂の玉に願をかけた

②奈落と四魂の玉は、骨喰いの井戸を通じて、この世(戦国時代)から消えた

③かごめは、奈落の死後、冥道を通じて異空間へと引き込まれた

④四魂の玉は、戦国時代と現代の骨喰いの井戸を消して、かごめをこの世から隔離した

⑤冥道と、骨喰いの井戸と、四魂の玉の中は、繋がっていた

⑥四魂の玉は、かごめと奈落を取り込み、永遠に闘わせること(四魂の玉が永遠に生き続けること)を望んでいた

ここから白夜の「役目」を具体化していくと、以下二点と推測できる。

①かごめと四魂の玉を異空間に引き込み、この世から隔離すること

②四魂の玉の輪廻転生を促すこと

これは、奈落が白夜に与えた「役目」として考えるには、非常に不可解である。何故ならば、奈落には一切の益をもたらさないからだ。

ご存知のとおり、奈落の望みはただ「桔梗の心が欲しかった」だけである。永遠の闘いなど望んではいなかった。白夜の冥道残月破の一振りは、四魂の玉の望みを叶える道を開くのであって、奈落のためではない。四魂の玉の言う闘いはもはや、奈落の望むことですらなくなってしまっている。全ては四魂の玉の望みのためであって、奈落の望みではない。ここで初めて白夜が、「四魂の玉の要請で生まれた存在」である可能性が出てくる。

 

こうなると彼の最期の言葉は、本当に奈落に向けて放った言葉なのかが、怪しくなってくる。寧ろ、四魂の玉に向かって放たれたものではないだろうか。白夜は、「奈落が作った存在」なのではなく、四魂の玉が、「奈落に作らせた存在」だったのではないだろうか。

 

では、何故白夜なのか?どうして奈落がかごめを斬らなかったのか?どうして白夜でないとこの「役目」は務まらないのであろうか?

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