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<奈落の覚悟>

「四魂の玉には意思がある」-この事実にいち早く気付いたのは、奈落だった。

完結編17話で新たに挿入された台詞で、それは窺える。

 

犬夜叉完結編17話 06:25-06:52

奈落「四魂の玉よ。このまま何もせず手をこまねいていると、翠子の意思にのっとられ、せっかく集まった憎しみの邪念が浄化されてしまうぞ。」

白夜(あれは…四魂の玉…奈落は何やったんだ?)

奈落「きさまが望むならば、我が肉体を貸してやろう。そして、聖なる光の元を断つがいい。」

 

奈落は曲霊を実体化させる際、「四魂の玉に語りかけている」のだ。桔梗を含め、これまで作中の登場人物たちは、四魂の玉、或いはそのかけらを飽くまで「ツール・道具」としてしか見ていない。“四魂の玉に宿った”、「翠子や妖怪の意思」に目を向けることはあっても、まさか「それら」をも統括する「高次の意思」、つまり「四魂の玉そのものの意思」があるなどとは、露ほどにも思わない。その点を踏まえると、このシーンは異様だ(実際この光景を覗き見した白夜は、上記のように奈落を訝しがっている)。

上記のこととあわせて考えると、最終決戦における奈落の行動は、犬夜叉たちに対する「自棄」だけでは説明が付かない点が多い。曲霊を殺生丸に消させてかごめの霊力を復活させ、犬夜叉の冥道残月破を外させ、白夜に能力を写し取らせてかごめを斬らせ、最後は骨喰いの井戸で果てる。これ程計画的な行動が、果たして「自棄」のみでやり遂げられるだろうか?

また、奈落は身体の性質上、人間や半妖を取り込めない。半妖であるが故に、体内の人間の性質が強まると、自身を弱体化させてしまうからだ(28巻)。

 

28-10 176

奈落「くくく、思いあがるな…きさまらなど喰う価値もない。か弱い小妖怪…犬夜叉のごとき半妖…ましてや人間など…この奈落の力を弱めるだけ。」 

 

犬夜叉たちを「異物」と分かった上で体内に誘い込み、戦った意味とはなんであろうか?

つまり奈落は最初から「負け戦」と割り切った上で、最終決戦に挑んだわけである。寧ろ、この戦いは「自身が負けること」にこそ、意味がある。それは「白夜を導き、彼(四魂の玉)に自らの魂を捧げるため」である。劇中、終始倒錯した感情を持ち続けた奈落だったが、白夜に対してはある種の「特別な感情」があったかのように思われる。

奈落は俗世の欲にまみれた人物なので、「四魂の玉の消滅」という抜け道には気付けない。よって、「四魂の玉は絶対なくならないもの」と見なし、自らもその輪廻に囚われるつもりでいた。つまり、最初から「死」よりも惨い結末を覚悟していたのだ。

上記の「覚悟」こそ、「白夜への使命感と愛」であろうか(かなり歪ではあるが)。それは、人智を超越した者に対する、「自虐的なヒロイズム」とも言えよう。

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