胡蝶の夢
夢幻の白夜考察サイト
<白夜が奈落に与えるもの>
【精神の安寧と危機、輪廻と解脱、安らぎと地獄、解放宣言と死刑宣告】
自分のつくりだした分身にすら何度となく裏切られ、究極の人間不信に陥り、自分自身しか信じられなくなった奈落は自身の鏡像を欲した。身体が共同体で自分の命令にも素直な白夜の存在は、奈落に「心の安寧」をもたらす存在であったはずだ。しかし実際には、「身体」が繋がっている為に却って「心」の不一致が露呈してしまった。身体は「一心同体」でも、「以心伝心」という訳ではなかった。神楽や赤子の場合は、肉体が別々だったから、飽くまで「他人」だった。「他人ならば裏切るのは当然」だろう。そう割り切れた。白夜によって奈落が抱えていた根本的な問題、奈落が必死に目を逸らし続けてきた問題、―「自分が何者で、何がしたいのかすら分からない」―そのことが明らかとなってしまった。
「自分の鏡像」、「共同体の分身」をつくってしまったために、「そもそも“自分”なんてものは最初からどこにもなかったということ」、奈落のアイデンティティーの脆弱さが暴かれてしまった。こうなると人間の精神は崩壊してしまうほかない。
白夜の「役目」の内の一つに、「奈落を四魂の玉の中に送り込むこと」も含まれている。このことが奈落に与える意味合いは非常に大きい。奈落の行く末は、二手に分かれている。
一つは「かごめが私欲に負けて玉に願ってしまい、奈落が永遠の闘いを強いられる結末」。
もう一つが「かごめが玉の消滅を願い、奈落が永遠の安らぎを得る結末」である。
白夜が四魂の玉の手の者である以上、彼に選択権はない。かごめの選択が全てを分かつのだ(56巻)。
白夜が奈落に与えるものは「永遠の安らぎ」や「解脱」でもあるし、「永遠の地獄」や「輪廻」でもある。
50年前に桔梗と四魂の玉を失った奈落は、自分の生まれた意味をなくしてしなった。喪失感を埋める代償行為として、無意味に人を喰らったり、弥勒の祖父に風穴を開けたりしている(6巻)。
白夜は無為の時間に終わりを告げた。人生の意味を与えてくれた。だがそれは同時に、奈落に引導を渡すということでもあったのだが。